出張に行っていた寒冷地には、かれこれ10年ほど前に3ヶ月間出向していたことがある。
10月~12月という本格的な冬とは言い難い季節であったが、それでも最後の一か月は通勤時にスコップを必要とした。
朝、駐車場で最初にすることは、自分の車(と思われる白い物体)を、雪から掘り出す作業だった。そして当時はまだ会社もブラックだったので、帰りは10時、11時は当たり前(当然残業代なんか出るわけない)だったが、帰るとき、会社の駐車場でもまた、自分の車を掘り出す作業。
慣れてしまえばこんなものかと思ったが、それでも暖地にしか住んだことがない自分にとっては実に面倒な作業であった。また、掘り出して、凍てついたフロントガラスのガリガリ氷を掻き取り、暖気して前が見える程度にフロントガラスを暖める作業が実につらかった。
朝はいい。余裕をもって起きれば済む話である。しかし帰りは、腹も空いているし疲れている。一刻も早く帰りたいのに、凍りつきそうな車内はなかなか温まらない。冷え切ったシートで車内が温まってくるのを待ちながら、氷を掻き落としたばかりのフロントガラスを再び埋めようと空から落ちてくる雪のひとひらひとひらをぼんやりと眺めていた。あれ以来、本格的に冬が嫌いになった。
3ヶ月の出向で、一つ、得たものがある。それは、人知を尽くしてもどうにもならん場合があるという事実である。
あれは降り続いた雪が久しぶりに止んだ、良く晴れた早朝のことだった。
この季節になると、その地の道は圧雪で凸凹ツルツルガビガビになる。運転は当然最徐行である。ことが起きた現場は、その先に三叉路と信号がある長い下り坂だった。
朝、通勤カーで道は混んでいた。皆、当然最徐行である。渋滞の列は遅々として進まなかったが、時間には余裕があるのでそれほど焦ってはいなかった。
前の車が進んだ。私もブレーキから少しだけ足を離し、クリープ現象だけでゆっくりと車間距離を詰めた。適当なところでブレーキを踏んだ。止まらなかった。足回りは当然、スタッドレスに換装済みであった。最徐行+スタッドレスであっても、凍りついたツルツル坂道では制動を得ることができなかった。とっさにハンドルを切ろうと思ったが、車道は狭く退避スペースはなかった。無理に切ったら民家に突っ込む。
あああああああ、あかん、これはもう、あかん、ぶつかる、ぶるかってまう、あっー
この時、自分にできることは無かった。できることは無かったので、とりあえず神に祈った。
幸い、前の車のバンパーと紙一枚の距離で車が止まってくれたのでことなきをえたが(まぁ、最徐行だったのでぶつかっても大したことは無かったかもしれんが、渋滞だったので玉突きでえらいことになっていた可能性は否定できない)。
クシャミが止まらない。頭痛い。熱もちょっとある。どうやら風邪を引いたようだ。
クシャミはどうでもいいのだが、必ず鼻水がセットになっているところだけはどうにもいただけない。
10月~12月という本格的な冬とは言い難い季節であったが、それでも最後の一か月は通勤時にスコップを必要とした。
朝、駐車場で最初にすることは、自分の車(と思われる白い物体)を、雪から掘り出す作業だった。そして当時はまだ会社もブラックだったので、帰りは10時、11時は当たり前(当然残業代なんか出るわけない)だったが、帰るとき、会社の駐車場でもまた、自分の車を掘り出す作業。
慣れてしまえばこんなものかと思ったが、それでも暖地にしか住んだことがない自分にとっては実に面倒な作業であった。また、掘り出して、凍てついたフロントガラスのガリガリ氷を掻き取り、暖気して前が見える程度にフロントガラスを暖める作業が実につらかった。
朝はいい。余裕をもって起きれば済む話である。しかし帰りは、腹も空いているし疲れている。一刻も早く帰りたいのに、凍りつきそうな車内はなかなか温まらない。冷え切ったシートで車内が温まってくるのを待ちながら、氷を掻き落としたばかりのフロントガラスを再び埋めようと空から落ちてくる雪のひとひらひとひらをぼんやりと眺めていた。あれ以来、本格的に冬が嫌いになった。
3ヶ月の出向で、一つ、得たものがある。それは、人知を尽くしてもどうにもならん場合があるという事実である。
あれは降り続いた雪が久しぶりに止んだ、良く晴れた早朝のことだった。
この季節になると、その地の道は圧雪で凸凹ツルツルガビガビになる。運転は当然最徐行である。ことが起きた現場は、その先に三叉路と信号がある長い下り坂だった。
朝、通勤カーで道は混んでいた。皆、当然最徐行である。渋滞の列は遅々として進まなかったが、時間には余裕があるのでそれほど焦ってはいなかった。
前の車が進んだ。私もブレーキから少しだけ足を離し、クリープ現象だけでゆっくりと車間距離を詰めた。適当なところでブレーキを踏んだ。止まらなかった。足回りは当然、スタッドレスに換装済みであった。最徐行+スタッドレスであっても、凍りついたツルツル坂道では制動を得ることができなかった。とっさにハンドルを切ろうと思ったが、車道は狭く退避スペースはなかった。無理に切ったら民家に突っ込む。
あああああああ、あかん、これはもう、あかん、ぶつかる、ぶるかってまう、あっー
この時、自分にできることは無かった。できることは無かったので、とりあえず神に祈った。
幸い、前の車のバンパーと紙一枚の距離で車が止まってくれたのでことなきをえたが(まぁ、最徐行だったのでぶつかっても大したことは無かったかもしれんが、渋滞だったので玉突きでえらいことになっていた可能性は否定できない)。
クシャミが止まらない。頭痛い。熱もちょっとある。どうやら風邪を引いたようだ。
クシャミはどうでもいいのだが、必ず鼻水がセットになっているところだけはどうにもいただけない。
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