蛙の夜

2012年5月17日 日常
火曜の夜、いつもより早めに会社を出て出張先の山奥事業所に向かった。
高速バスは空いていた。シートをポツポツと埋める人影は疎らで、出発時間10分前に滑り込みでチケットを買った私は予備席だった最前列でぼんやりと近づき流れ去る風景を眺めていた。
進むにつれて人家の灯りが減っていく。道行はトンネルへの出入りを頻繁に繰り返すようになっていく。道の左右は黒い塊のような山肌が圧倒的な存在感を放っていた。
途中、霧が出てきた。
山から山へとつなぐ橋梁の上に伸びる道は、谷底からはるかな高みを走っている。濃霧は、道の両脇の山塊もべったりと白く塗り潰していた。
白く濃いミルクで満たされた中空に浮かんでいるような錯覚を覚えた。
霧の中バスはひた走り、やがてICを下り一般道へと降りた。
濃霧がもたらした夢幻的な非現実感に覆われた高速道とは一転し、川のせせらぎや田圃の傍らを走る田舎道は、窓開けていないにも関わらずバスの中に土の幻臭を齎すような懐かしい日常感にあふれていた。
その懐かしさの源泉がなんであるのかを、しばし考えて、はっと気づいた。
蛙の声だった。

小学生の頃ぐらいまでは、実家の周辺には田圃も多く、そもそも小学校は前も後ろも広大な田圃の真ん中だった。GWが開けて田圃に水が入る頃になると、夜は賑やかしい蛙の声で彩られた。
大学は関西の古い町だった。大学と安下宿の周辺に水場はなく、一旦は蛙の声とは縁遠になった。そして就職して最初の数年過ごした山奥の事業所の寮は、これまた田圃に近しい環境で、再び初夏の夜の日常音として蛙の声を聴くようになった。
転勤し実家に戻って来たころには、もううちの周辺で農業を営む人はほとんどなく、かつて田圃だった土地にはマンションやアパート、コンビニが立ち並んでいた。
初夏の夜は、ときどき田舎の暴走族がパラリラパラリラ騒ぐぐらいで、静かなものになった。それが長く続いた。

窓を閉めたバスの中まで漏れ聞こえてくるほど耳騒がしい蛙の声は、三十年以上前の、まだ小学生の頃の初夏の夜の空気をリアルに呼び起した。ただの郷愁よりも、もっと肉感的で生々しくさえある記憶の賦活だった。



昨日の分
ステッパー 51分(4200ステップ)
腕立て25×3
チューブローイング30×3
ヒップレイズ50×3
クランチ50×3

今日の分
ステッパー54分(4400ステップ)
腕立て27×3
チューブローイング30×3
ヒップレイズ50×3
クランチ50×3


ステッパーが本格的にイカれて油さしても耳を覆わんばかりの異音を発するようになったので、次を購入することにした。
現在機種選定中。

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