数日前に見た、夢の話。
詳細な内容や筋立ては覚えていない。見知らぬ土地をやたらと歩いて、ちょっとホラー要素があったような気がするのだが、そのあたりは1週間前の晩飯のメニューと同様に全く記憶に残っていない。
記憶に残っているのは、朽ちた家だ。
季節は春、もしくは秋。
寒くもなく、暑くもなく、強い風もなく、明るい日差しが降り注いでいた。
陽光はまだ衰えることなく若く瑞々しい正午前のもの。
ただひたすらにのどかで穏やかな時間だった。
私は細い道の歩いていた。軽自動車が一台通ったら横幅いっぱいギリギリ。そんな細さだ。一応アスファルトで舗装されていたが、足元を強く蹴ると荒れて浮き上がったアスファルトの破片が小石のように路面から剥がれて転がった。
ロクに管理されていない隘路。あるいは私道であったのかもしれない。
まぁ、夢の話なのでどうでもいいことだが。
その道の両側の右手片側は緩い斜面となって落ち込んでいた。左のもう片側は1mほどの高さの石垣になっていて、石垣の上に道沿いに家屋が並んでいた。
家々はそれほど密に建っておらず、庭に面してでもいるのか植え込みの灌木の枝が伸びて石垣に半ばまで垂れているところもあった。
植生は中部以南。
家屋の切れ目の空き地のような場所には、照葉樹のツヤツヤした緑の濃い葉が陽光に照り栄えていた。
空気はどこか塩の匂いを含んでいた。或いは海沿いの地方なのかもしれない。
緩い上り坂だった。
暑くもなく、寒くもなく、心地よい明るい陽射しの中、緩い上り坂をのんびりと歩いていた。
道の左側に伸びる石垣には、ところどころ途切れがあった。途切れているところには、階段がついていた。石垣の上の家の住人が道に降りるために付けられた階段だろう。
何本目かの小さな階段を通り過ぎ、テクテクと道を登って行く。
どれほど歩いただろか。
また、石垣が途切れて階段があった。しかし、その階段は段の途中が抜けてしまっており、こぼたれ使い物にならない状態になっていた。
何の気無しに視線を上げる。石段の上に、その家屋があった。
平屋建ての小さな家があった。
廃屋だった。
窓はない。
戸はない。
もとは窓出会った場所、もとは玄関であった場所はただの抉られた孔だった。
そこから外の陽光が内部の臓物を蹂躙するのを遮るものが、何もなかった。
元は玄関であったであろう場所から、内部が容易に見て取れた。
何もない。伽藍どうだ。
吹き込んだ土埃で毛羽立った壁板が茶色く汚れていた。
それだけだ。
ただの廃屋。朽ちた家屋。明るい陽射しの下にたたずむ、放棄されたかつての住居。
背筋が凍った。
理由はわからない。わからないが、私はその家が怖かった。とてつもなく怖かった。
詳細な内容や筋立ては覚えていない。見知らぬ土地をやたらと歩いて、ちょっとホラー要素があったような気がするのだが、そのあたりは1週間前の晩飯のメニューと同様に全く記憶に残っていない。
記憶に残っているのは、朽ちた家だ。
季節は春、もしくは秋。
寒くもなく、暑くもなく、強い風もなく、明るい日差しが降り注いでいた。
陽光はまだ衰えることなく若く瑞々しい正午前のもの。
ただひたすらにのどかで穏やかな時間だった。
私は細い道の歩いていた。軽自動車が一台通ったら横幅いっぱいギリギリ。そんな細さだ。一応アスファルトで舗装されていたが、足元を強く蹴ると荒れて浮き上がったアスファルトの破片が小石のように路面から剥がれて転がった。
ロクに管理されていない隘路。あるいは私道であったのかもしれない。
まぁ、夢の話なのでどうでもいいことだが。
その道の両側の右手片側は緩い斜面となって落ち込んでいた。左のもう片側は1mほどの高さの石垣になっていて、石垣の上に道沿いに家屋が並んでいた。
家々はそれほど密に建っておらず、庭に面してでもいるのか植え込みの灌木の枝が伸びて石垣に半ばまで垂れているところもあった。
植生は中部以南。
家屋の切れ目の空き地のような場所には、照葉樹のツヤツヤした緑の濃い葉が陽光に照り栄えていた。
空気はどこか塩の匂いを含んでいた。或いは海沿いの地方なのかもしれない。
緩い上り坂だった。
暑くもなく、寒くもなく、心地よい明るい陽射しの中、緩い上り坂をのんびりと歩いていた。
道の左側に伸びる石垣には、ところどころ途切れがあった。途切れているところには、階段がついていた。石垣の上の家の住人が道に降りるために付けられた階段だろう。
何本目かの小さな階段を通り過ぎ、テクテクと道を登って行く。
どれほど歩いただろか。
また、石垣が途切れて階段があった。しかし、その階段は段の途中が抜けてしまっており、こぼたれ使い物にならない状態になっていた。
何の気無しに視線を上げる。石段の上に、その家屋があった。
平屋建ての小さな家があった。
廃屋だった。
窓はない。
戸はない。
もとは窓出会った場所、もとは玄関であった場所はただの抉られた孔だった。
そこから外の陽光が内部の臓物を蹂躙するのを遮るものが、何もなかった。
元は玄関であったであろう場所から、内部が容易に見て取れた。
何もない。伽藍どうだ。
吹き込んだ土埃で毛羽立った壁板が茶色く汚れていた。
それだけだ。
ただの廃屋。朽ちた家屋。明るい陽射しの下にたたずむ、放棄されたかつての住居。
背筋が凍った。
理由はわからない。わからないが、私はその家が怖かった。とてつもなく怖かった。
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